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懐剣系 卑怯者の小刀 (ヒキョウモノノコガタナ) 【懐剣】 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 基本性能 価値 重量 攻撃力 耐久度 7 4.5 25 57 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 +6 +2 -10 − 装備可能 全職 装備区分 懐剣術系武器 必要Lv 15以上 付与効果 − 備考 裏堺の売国商人のドロップ 情報募集中 名前 コメント
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懐剣系 卑怯者の小刀 (ヒキョウモノノコガタナ) 【懐剣】 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 基本性能 価値 重量 攻撃力 耐久度 7 4.5 25 57 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 +6 +2 -10 − 装備可能 全職 装備区分 懐剣術系武器 必要Lv 15以上 付与効果 − 備考 裏堺の売国商人のドロップ 情報募集中 名前 コメント
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次の衆院選で勝てないの分かってるからって今民主党から離党してるクソ議員は卑怯者 選挙に勝つことしか考えてないクズ だってさ、なんでこのタイミングなんだよ!? 自分の正義に従って離党するなら解散前にしろよ 解散総選挙って分かってから離党するとか選挙で負けたくないってことしか考えてねぇだろ死ね どこに入れてもクソとか無理ゲー 選挙制度自体がもはやこのクソ国では機能してない 哲人による哲人政治を望む まだ共産党に入れたほうがマシだは
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卑怯者はだあれ? ◆auiI.USnCE 「オラッ、遅えぞ!」 早間の怒号が、前方から響いてくる。 疲れてる小牧さんを気遣うを様子もなく、ズンズンと進んでいっている。 僕――直枝理樹はそれに憤りを感じるも、それを表に出す事はできなかった。 出した所で、余計に辛くなるのは小牧さんなんだから。 だから、僕は息をきらしながら、必死に歩いている愛佳さんを気遣いながら並列して歩いていた。 結局、僕達は市街地を目指してひたすら、南下していた。 何故、目指しているか聞く事はできなかったけど、でもこればかりは早間の判断に間違いはないだろう。 やがて、日が暮れてしまう。当然辺りは真っ暗になってしまうだろう。 その上で、視界が悪くなる森林にいるよりは、市街地にいる方がよっぽどいいのは当然だった。 だから、僕達は黙って彼に付き従っている。 最も、僕らも彼から逃げられはしない。 彼が持つ武器が僕達を縛っている。 早間は恐らくだけど、小牧さんの事を……。 だから、僕達が逃げ出すなんて見せると、逆上して襲い掛かるに決まっている。 そして、襲いかかれて僕達は抵抗できるのだろうか。 きっとどうにもならないだろう。何故なら。僕達は武器も無い。 それに、僕にはナルコレプシーという爆弾を抱えている。 二人きりで逃げて、その最中で、その爆弾が爆発してしまったら。 寝ている間に襲撃されたら。 小牧さんが殺されてしまったら。 それもとても耐え難い恐怖だった。 だから、結局の所、早間から逃れる事はできないのだろう。 早間という監獄から、僕達は逃れる事は出来ない。 こんな八方塞がりな状況の中で、僕は居る。 頭を抱えたくなるけど、抱えて悩んでしまったら小牧さんが心配してしまうだろう。 だから、僕は強くなければならない。 でもと思う。 こんな時、恭介ならどうするだろうと。 あの頼れるリーダーなら、こんな状況でも打ち破ってくれるのだろうか。 誰にも思いつかないアイデアを出して、打ち破ってくれると思う。 そんな凄い人だ。 今、恭介はどうしているのだろう。 恭介が居るのなら、こんな状況を直ぐに打ち破ってくれるのに。 恭介が居るのなら……きっと…… 「……大丈夫、直枝君?……何かぼっとしてたみたいだけど……」 「うん、いや、大丈夫だよ。気にしないで」 そんな考えをしているうちに随分とぼっとしていたらしい。 心配する小牧さんに対して僕は気丈に笑ってみせる。 どうにもならないこの状況で、僕は笑ってみせた。 笑うしかなかった。 「……ひぃいいいいいいいいいいい!?!?!?」 その時だった。 早間の叫び声が前方が聞こえてきたのは。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 其処に居たのは、いや、あったのは。 「し、死んでいる……」 胸の辺りを紅く染めていて、目を閉じられた少女。 いや、少女であったモノ。 眠っているようで、それは全然違う。 醒めない眠り……もう、死んでいたのだから。 車椅子に横たわりながら、彼女は独りで逝っていた。 桃色の髪を紫の布で両側に纏めた少女は、光を浴びながら、死んでいた。 …………あ、何だろうこれ。 ……死んでいる……んだよね? そうだ、死んでいる…… むせ返るような、血の臭い。 鉄のような臭いが鼻をつく。 もう、目を覚ますことは無いんだよね。 ………………怖いな。 ただ、怖い。 これが、鈴だったら。 これが、小毬さんだったら。 これが、来ヶ谷さんだったら。 これが、クドだったら。 これが、西園さんだったら。 これが、葉留佳さんだったら。 「…………うぇぇ」 僕は、ただ気持ち悪くなってきた。 胃の中になんて何も無いはずなのに、吐き気が止まらない。 其処に当たり前のようにある死が。 そして、誰か大切な仲間の死を想像しただけで。 僕は堪らなくそれが怖くて、思わず自分の肩を抱いてしまう。 「直枝君……」 小牧さんの呟きが聞こえるが、僕は自分の肩を抱いたままだった。 身体の震えが止まらない。 本能的に目の前の死がただ怖くて。 僕はただ、震えていた。 「……くっそ、くっそ! こんなん平気だ。怖くねぇ!」 早間が恐怖を隠しきれない声で自分を鼓舞する。 苛々しながら、ただ吼えて。 「びびらせやがって、この!」 怒りに任せながら、車椅子を思いっきり蹴っ飛ばす。 車椅子はがしゃんと音をたてて、少女ごと横に倒れた。 そして少女の遺体は、車椅子から身を投げ出して草原に置かれた。 その拍子に閉じられていた目を開かれる。 色の無い瞳が、何故か攻め立てるように僕を見つめている感じがした。 「くっそ……怖くねぇ……怖くねぇぞ……おら、行くぞ!」 早間が、此処から離れるように言う。 僕達がこれに反抗する必要はない。 無いのだけど…… 僕を見つめる少女の瞳が。 置いて行かないでと訴えるような感じがしてならなくて。 僕は思う。 もし、これが僕の知っている人ならば。 僕はどうするのだろうか。 僕は、きっと……うん。 だから、 「ねぇ…………この子、埋葬してからにしようよ」 せめて、彼女をともらいたかった。 このまま、野晒しにする事が、どうしても嫌だった。 このまま、『死』と言うものに慣れたくなかった。 せめて人間らしい事をしないと、いつかどこかで狂ってしまいそうで。 この死をやすらかにしないと自分が可笑しくなってしまいそうだった。 だから、僕は彼女の為ではなく、本当は自分の為に彼女を埋葬したかった。 「はぁ!? ふざけんじゃねえぞ! 何言ってんだよてめえ。そんな時間かかる事できるかよ!」 早間の反論はもっともだった。 時間のかかる行為である事は確かなのだ。 その間に襲撃者に見つかった場合の事を考えるとリスクが高すぎる。 それでも、僕はやりたくて、食いつく。 「簡単にでいいんだ……だから」 「ああん!? なめんじゃねえぞ! てめぇ!」 早間は怒りかられ、僕を殴ろうとして。 「やめて!」 小牧さんが僕と早間の間に割って入って制止する。 それは、僕を庇ったという事で。 「小牧……てめぇもかよ!」 怒りの矛先が小牧さんに向いてしまう事にもなる。 ああ、それは避けなければならないのに。 僕は、何をやってるいんだろう…… 思わず自己嫌悪になりかけた時。 早間が悪知恵を働かせて、何かを思いついたようだ。 いやらしそうに顔を歪めて。 「いいぜ、埋葬してもいい……その代わり」 前置きをたっぷりして。 いやらしそうに小牧さんの胸を見て。 「小牧……」 「な、何……?」 「服脱げよ」 欲望を丸出しにした、余りにも下品な言葉。 僕は焦って 「な、何でそんな事を言うんだよ!」 「だって、待ってる間危険だろ? その間せめての楽しみをなぁ……お前も見るか? お前も見たいんだろ?」 当然の様に早間は言って。 そして、僕にまで同意を求めてくる。 なんで、こんな下劣な事を言ってくるんだろう。 胸の中に早間への怒りが増していくのがわかる。 だけど、抑えなくちゃ……守らないといけないから。 「な、直枝君……」 小牧さんは哀願するように、僕を見つめる。 当然だ。服を脱がされて何をされるかわからない。 そして、彼は僕達を容赦なく殺せる武器もある。 それに抗える訳が無い。 だから僕は搾り出すように声を上げる。 「解ったよ、埋葬はしない。これでいいよね?」 「…………ちっ……あぁ……まぁいいだろ。しかたねえ」 僕が譲歩する事にした。 正直、早間が受け容れないかとヒヤヒヤしたが、それも無かった。 その事に少し安堵しながら、小牧さんの方を向く。 彼女も安心したようで、僕も少し嬉しくなってくる。 「……ちっ……だったら早く行くぞっ!」 早間が苛々しながら、そう呟いて歩き出す。 僕はその後姿に向かって聞こえないに呟く。 「……卑怯者め」 その言葉に、小牧さんは切なそうに僕を見たが理由は解らなかった。 僕は埋葬でき無い代わりに、せめてと思って、少女の目を閉じさせる。 ……いつか、この監獄から解き放たれる時ができたら埋葬したい。 そう思いながら、僕らはまた歩き出した。 草原に、独りぼっちになった彼女を残して。 【時間:1日目午後2時30分ごろ】 【場所:E-7】 直枝理樹 【持ち物:レインボーパン詰め合わせ、水・食料一日分】 【状況:頭部打撲】 早間友則 【持ち物:レミントンM1100(4/5)、スラッグ弾×50、水・食料一日分】 【状況:健康】 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 卑怯者はあたしの方だった。 だって、あたしは直枝君の事を利用したんだから。 あの遺体を見て、真っ先に思い出したのは妹の事。 車椅子で死んでいた少女をみたら病弱なあの子を思いだせずには居られなかった。 そしたら、あたしは怖くなった。 あの子が、もう死んでいるんじゃないかって。 あの子が、恐怖で怯えているんじゃないかって。 そう思ったら、怖くて怖くて仕方なかった。 だから正直、死んでいる少女の事なんて、気にしてられなかった。 あたしは、早く妹を見つけたかったのだ。 けど、直枝君は遺体を埋葬したいと言った。 それはある意味人として当然の行為だろう。 この場所でも狂わず善人で居た直枝君は凄いと思う。 でも、あたしは、それが無駄な時間を食う行為だと思った。 だから、あたしは直枝君をを利用しながら、彼の行動を邪魔をした。 直枝君を庇えば、早間はあたしに対して、何か要求するだろう。 それを直枝君が受け容れる訳がない。 だから、あたしは彼を庇った。 結果として彼は諦めた。 そして、時間を食うことは無かった。 でも、彼は怯えるあたしを守ったと思っているだろう。 本当はただ、時間が惜しかっただけなのに。 ああ、なんてあたしは卑怯なんだろう。 彼の気持ちを利用して、彼に人間らしい行為をやらせなかった。 最悪な卑怯者だった。 早間の事を卑怯者だと彼は言った。 でも、そのじつ、あたしも卑怯者だった。 御免ね、直枝君。 あたしを守ってくれたのに。 ずっとずっと今まであたしを守ってくれている。 例え自分が傷ついても。 その事があたしは心の底から嬉しかった。 だから、直枝君の事を信頼して、感謝もしている。 けど、それでも。 あたしは直枝君に感謝の気持ちを持ちながらも。、 あたしは自分の為に直枝君を利用したんだ。 さいあく…… ごめん……本当に御免なさい。 でも、あたしは妹も大切なの。 ごめん、ごめんね……直枝君。 【時間:1日目午後2時30分ごろ】 【場所:E-7】 小牧愛佳 【持ち物:缶詰詰め合わせ、缶切り、水・食料一日分】 【状況:健康】 063 この身の全ては亡き友のために 時系列順 066 血塗れて、ただ、貴方達を想う 064 死というものは 投下順 066 血塗れて、ただ、貴方達を想う 019 Prison 直枝理樹 100 Shattered Skies 早間友則 小牧愛佳
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名称:鼠人間の卑怯者(ラットマン・ミーンネス) レベル: ランク: 出現場所: ◆解説 背が小さくひ弱だが、隠密の技術に優れ、物陰や死角から攻撃することを得意とするずる賢い〈鼠人間〉《ラットマン》。投げつけてくる石つぶてには毒性の唾液が塗布されており、命中するとめまいを起こして動けなくなるときもある。投石をかいくぐって接近しても、すぐさま物影や死角に逃げ込まれてしまう。 〈鼠人間の卑怯者〉は他の〈鼠人間〉をわざわざ敵に姿を見せる愚か者とバカにしているが、自身もぴかぴかしたコインや石に目が無いため、それに気をとられて隠れ場所からつり出されてしまうこともあるらしい。 アイテム モンスター 用語 冒険者 システム サブ職業 召喚術師 地名 口伝 組織 クエスト 典災 職業 大地人 ゾーン 種族 妖術師 武士 守護戦士 神祇官 施療神官 暗殺者 古来種 盗剣士 武闘家 事件 吟遊詩人 特技 付与術師 森呪遣い 航界種 ダンジョン
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第01話 卑怯者-サイコロマワレ- 視界を黒く染められたまま、がたがたと揺られ運ばれる。 それが死へのカウントダウンのように聞こえ、恐怖と焦燥は増していった。 しかし、おそらく顔には出ていないだろう。 怯える自分がいる一方で、嫌に冷静な自分もいた。 その冷静な自分には、「ドナドナの牛はこんなような気分なのか」などと考えるだけの余裕がある。 (さて、どうするか……) 当たり前だが、今考えるべきことはそんな阿呆なことではない。 思考回路を切り替えて、今後の方針を考える。 この殺し合いとやらが冗談の類では無さそうなことはよく分かった。 首輪の爆弾とやらは正直半信半疑だが、事実だと思っておくに越したことはないだろう。 となると、殺し合いに抵抗するという選択肢を選ぶことはかなりリスクが高いものということになる。 かと言って、積極的に殺して回るということにも抵抗があった。 そうなると、取るべきベストの選択肢は。 (首輪の爆破を回避して、それからは盤上の観察に徹する、か――) 『6時間誰も死なずに首輪爆破』なんて事態は回避しつつも、見に徹する。 そして終盤、大勢が決した頃に優勢なチームの傘下となる。 卑怯極まりないが、おそらくこれが最良の作戦だろう。 良心へのダメージも、おそらくは一番少ない。 だが―― (この移動時間の長さを考えると、この島は相当な大きさということになるな) それには、時間がかかる。 仮に序盤に判断を下すにしても、12時間はいるのではないのだろうか。 なにせ倒す相手や仲間候補パーティを同時に探さねばならないのだ。 複数パーティと遭遇するにはそれなりにかかるだろう。 脱出に繋がりそうなチームなのか口だけのチームなのかの見極めにも時間がかかる。 とにかく、この作戦は短期決戦に向かないのだ。 正直、今の私は短期決戦を望んでいる。 (モモ……みんな……) 今の私は、決して一人などではない。 大切な、本当に大切な仲間がいるのだ。 そんな彼女達の身を危険にさらしておくなんて、とてもじゃないが出来やしない。 勿論、彼女達を手にかけるなんて以ての外だ。 では、彼女達と共に殺し合いを脱出するのか。 その選択肢も簡単には選べない。 何せ相手はこちらを拉致できる程の実力と権力を持っている。 そう易々と一介の女子高生に痛い目に遭わされたりはしないだろう。 そうなると、結論としてどうするか保留するのが一番ということになる。 だがしかし、これは先述の通り時間がかかりすぎてしまう。 その結果、仲間達が死んでしまう可能性は跳ね上がることとなる。 要するに堂々巡り。 ひたすら同じ所をぐるぐる周り続ける哀れで愚かなモルモット。それが私だ。 (着いた、か――体育館からは遠いな) 少々長いこと運ばれていたように思う。 振動が止み、何か(おそらくトラックか何かの輸送機だろう)から下ろされた。 だがしかし、まだ暗闇は晴れてくれない。 おそらく体育館から一番離れた箱がしっかり届けられるまで幕は上がらないのだろう。 おかしな平等は徹底するということか。 (考える時間がまた出来てしまったな) いっそ考える暇もなく放り出してくれていたら、この状況に流されることも出来たのに。 どうやらそれは許されないことらしい。 麻雀の腕を殺し合いに結び付けたい彼らのことだ、思考の余地を奪う真似は極力避けるつもりだろう。 もしかすると、体育館から一番離れた参加者ですら、到着から一定時間は思考の時間を与えられているのかもしれない。 (私は……どうしたいんだろうな) 自分の気持ちが分からない。 ――いや、気持ちなら分かっている。 やりたいことは、みんなで一緒に脱出だ。 だがしかし、そこに“やれること”と“待っているであろう未来”を加味すると、途端に選ぶべき選択肢が分からなくなる。 (……一度、頭を整理しようか) 今の状況は、不謹慎ながら状況が背を押してくれているようなものだ。 自分の心に素直になっても後腐れのないシチュエーション。 こんな時でないと気持ちの整理も出来ないなんて、卑怯者にも程がある。 我ながら呆れ返るが、己を貶めることに時間を割いて結論を出せないなんて、許されないことだろう。 深呼吸し、考える。 (死にたくは、ない) 当たり前だ。世界のどこに17やそこらで他界したがる奴がいる。 自殺をする若者だって、苦渋の末に選んだだけで「じゃあちょっくら死んでみるわ」なんて軽い気持ちで死んだわけじゃないだろう。 きっと、死にたくないけど生きられないから選んだのだ。 誰だって、許されるなら生きていたい。 (私は、みんなが好きだ。殺すことなんて出来ない) 仮に、マシンガンのようなものを貰ったとして。 それを鶴賀の仲間達に向けることができるだろうか? 他校のみんなに行うことすら厳しいのに、出来るはずなんてない。 (ああ、そうだ。私は好きだったんだ、みんなのことが) 大会が終わっても。麻雀部を引退しても。 麻雀部の仲間としてだけでなく、一人の人間・加治木ゆみとして。 ずっとずっと、一緒にいたいと思えるくらい。 (お前のことも大好きだったよ――モモ) 今なら、素直に言える。 私はモモを大切に思っていた。 大切にしすぎて、深入りすることを恐れてしまい、ずっと逃げていたけど。 それこそ、彼女のためなら何でもしてやりたいと思える。 それほどまでに、彼女は大切な存在だった。 (もし、どうしても誰か一人を選ばなければならないとしたら――) 相手はモモ、お前だよ。 (……どうやら私は、よほどの愚か者らしいな) さっきも言ったが、死にたくはない。 それでも。 私とモモ、どちらか一人を救えると言われたら――おそらく私は、モモのことを選ぶだろう。 要するにそれは、私が殺しあいの頂点に立つ可能性は0になったということを意味している。 私が悪鬼になったとしても、最後に立っているのはモモだ。 間違っても私じゃない。 (モモは……そんなことで救われても喜びはしないだろうな) おそらくモモは、そんな私を拒絶するだろう。 当然だ、自ら望んで手を染めるのだ。 こんな状況とは言え、拒絶しないわけがない。 となると、共に行動し守ってやることはできない。 つまり、モモ以外を殺し尽くすまでモモが生き延びていることを祈ることしかできないということになる。 (……とはいえ、見つけられるのだろうか…… 普段でもたまに見失うモモを、見ず知らずの土地なんかで……) 共闘し奴らに刃向かうとしても、モモ達と会えなくては守るも何もあったものではない。 戦闘しないと協定を結んだ相手と共に、無駄に時間を過ごす可能性の方が高い。 何せ、この現状をどうこうできるような能力を持っている者に心当たりなんてないのだ。 少なくとも、鶴賀の5人にそんなスキルを持った者なんていない。 (結局、どちらも難易度としては変わらない、か……) やはり私は卑怯者だな、とふと思う。 結局私は、行動の基盤を第三者に求めている。 手を染めることも、殺し合いを放棄することも、誰かのためという言い訳がなくては出来ないらしい。 とんだ腑抜けだ。 今こうして箱の蓋を開けられた今でも、どうすべきか決めかねていた。 (そうだ、まずは武器だ……) どうせ卑怯者なら、とことん卑怯者でいよう。 一種開き直りにも似た冷静な思考回路が、支給された武器の確認を進めてくる。 勝ち残れそうな武器でないなら、選択肢は自ずと一つに絞られるのだ。 またも第三者に取るべき立場の選択を委ねる形になるが、仕方あるまい。 立ち止まってしまうよりは万倍いい。 私の運命を左右するであろう武器は、箱の前で適当に渡されたアタッシュケースの中に入っているらしい。 持ち運びにくいカバンなのは、さっさと中身を出して中身だけを持ち歩けということだろう。 もっとも、単に雀士に似合うカバンから連想されたのがアタッシュケースだったというだけなのかもしれないが。 「ん……?」 思わず声が漏れてしまう。 私のアタッシュケースの中には、更に一回り小さいアタッシュケースが入っていた。 ロシア土産か。 (なんなんだ、一体――――ッ?) 小さいアタッシュケースを開け、驚愕する。 ジャラジャラと音を立て、中身がこぼれ落ちたのだ。 森の中に響き渡るその音は、乱暴な洗牌を思わせた。 地面に散りばめられたのは、ダイアモンドのような透き通った麻雀牌。 中には背面の黒いものが存在していたが、大部分は透明だった。 「……………………」 アタッシュケースに入っていた添付の説明書(説明書が付いていることは、箱がしまった後で取ってつけたようにアナウンスされた)に目を通す。 そこには、よく分からない文体で以下のことが書かれていた。 『大当たり! 鷲巣麻雀牌!』 文字の横に顎が鋭利なキャラクターが描かれていた。 その時点で読む気が大分失せてくるも、仕方無しに続きを読む。 大当たりと言われた以上、どんなものか把握しておく必要性があるからだ。 場合によっては、殺し合いに加担する道を選ぶことになるかもしれない。 『これは、伝説の一夜で使われた麻雀牌です。 オリジナル故にプレミアがあり、貴重な一品となっております。 この牌を使い、通常の卓で戦えば思う役が作れるので、麻雀力で相手を倒したい場合に使えます!』 頭が痛くなってきた。 どうやらこれは、麻雀の役でダメージを与えられるような非現実的甚だしい連中にのみ意味のある武器らしい。 私が使えそうなものといえば、そう―― 「この手袋くらいだな……」 説明書によると盲牌防止用として用意されたこの手袋は、かなり厚手でそれなりに防御力も高そうである。 刃物くらいなら掴んでも大丈夫かもしれない。 それに、首を締めた際に引っかかれてもダメージを受けないというメリットもある。 (絞殺、か……) 下手に慣れない銃よりも、確実に行えるであろう殺害方法。 男性相手ならともかく、女性相手なら十分有効だろう。 特に現実感の湧かない序盤なら、油断した相手を締め殺すのは容易いと思われる。 (……結局、武器でも立ち位置を決めることが出来なかったな……) 殺して武器を奪える程度の武器ではあったが、最後の二人になれそうな程の武器ではなかった。 それ故に、どうすべきかの決断をまた下せなかった。 (いっそ、最初に会った人物によって選択を変えるか……?) 最初に出会った人物には、どう動くべきか左右する要素が大量にある。 例えば、相手の武器が良くなかった場合、手にかけるメリットはない。 むしろ共に行動して数の力を活かすべきということになる。 逆にいい武器を持っていて友好的なら、殺して武器を奪った方がいいだろう。 初対面の人間がそうだった場合、正直相手を全面的に信用なんてできないのだから、いつか争いに発展する恐れがある。 そうなる前に奪ってしまうのがベストの選択と言えよう。 また、相手が殺る気だった場合。 もし相手の武器が貧弱なら、返り討ちにしておくべきだ。 油断した鶴賀の皆が殺されたりしないように。 その場合、手を染め続けるのが一番だろう。 如何なる説明をしても、おそらく相手の友人は正当防衛を認めてはくれないだろうし、かと言って殺しを隠し切る自信など無い。 そうなると、皆で手を取り合うというのは難しいということになる。 逆に相手の武器がよかった場合、逃げる以外にやれることがない。 おそらくは傷つくだろうし、手を取り合って助けて貰わねばいけないということになる。 (いや、駄目だ……貴重な時間を無駄には出来ない……) どのくらいの広さが舞台か分からないが、地図を配っている以上そんなに狭くはないのだろう。 となると、一人で何かをする時間が多少はあるということだ。 その時間を有効利用するためにも、方向性は最初に決めなくてはいけない。 麻雀だって、大体の方向性は早めに決めるのが定石だ。 自分がのんびりしている間にも、周りは手を進めるのだから。 「ん…………?」 初動のことを考えると、立場はやはり今決めるべきである。 そのことを再認識しながら雀牌を拾い集めてた時だった。 地面に散らばった雀牌の中に、異質なものを見つけたのは。 「これは……賽、か」 小さなサイコロ。 起家決めで使うそれも、どうやらアタッシュケースに入っていたらしい。 そして、それを見ていてふと思いつく。 卑怯者で決断できないのなら、いっそ全てを天に任せてしまうのもありかもしれない、と。 「……奇数が出れば、皆で戦いこの悪夢を終わらせる」 手の中で、数度サイコロを転がす。 「偶数が出たら――――」 それから勢い良く地面に向けて投げ放った。 思った以上によく転がったサイコロは、やがて地面の起伏に勢いを殺され停止する。 地面がやや盛り上がっているため、上の面がわずかにこちらに向いていた。 だから、一目で出た目は分かった。 「この殺し合いに乗って――」 意思を固めるようにして、大きく深呼吸する。 出た目は、4。 この国では『死』を連想し不吉だとされるその数字が、はっきり空を見上げていた。 「モモを、生きて帰らせる」 呟いたのは決意の言葉。 これからせねばならない行動。 バクバクと鳴っている心臓の音から目をそらし、サイコロを回収すべく歩を進める。 すると、ブッシュの中から急に何かが飛び出してきて、地面にあったサイコロを蹴飛ばした。 「なっ……」 「私にやる気はない……」 出てきたのは、人の足。 続いて、黒髪の女性だった。 残念ながらモモではない。 両手を上げ、敵意がないことをアピールしていた。 その手には、ノートパソコンが握られている。 「このフザケたイベントを潰す……手を、貸してほしい」 殺り方は決まった。 握手をする振りをして、奇襲で前から首を締める。 相手の細い(胸だけは例外だ、遺憾ながら)体を見るに、馬乗りになれば負ける要素は無いだろう。 「構わないが……どうにかするアテはあるのか?」 相手に手を差し伸べながら、自然に見えそうに話を振る。 どうせアテなんてないのだろうと、心の中では毒づきながら。 「ある」 「なっ……」 だからこそ、この即答に度肝を抜かれた。 おそらく蒲原あたりなら、今の私の表情を2週間はからかいのネタにするのではないだろうか。 そのくらい目を丸くし、間抜けに口を開けている。 「私の支給品はネット麻雀……そのためのノートパソコン。 島内の施設にしかアクセスはできないけど、問題ない。 ――これを使って、首輪システムを乗っ取る……そして、首輪の爆破を無効にする」 頭をガツンと叩かれたような思いだった。 正直パソコンはネット麻雀を出来る程度の知識しかなく、首輪システムの乗っ取りが実現可能かどうかなんて判別できない。 それでも、私はそれを信じたかった。 信じられないことではあるが、信じたくなるほどの希望が急に降って湧いてきたのだ。 誰だって飛びついてしまうだろう? 賽の目なんて無視してでも。 「本当に、可能なのか? それが出来れば、確かに逃げ出せるだろうが……」 「可能……けど、時間がかかる。それに、かなり集中する必要が。 だから、お願い……私を守って」 自分は切り札なのだから、何としてでも守りぬけ。 つまりはそう言っているのか。 ……ああ、いいだろう。上等じゃないか。 それが体よく利用するための罠だとしても、飛びついてやろうじゃないか。 モモが、みんなが生き残る確立が1%でも上がるというのなら、何だってしてやるさ。 「拠点になりそうな所を探していた……」 言うと、周囲を見渡し始めた。 そして、なにやら納得したように腰を下ろす。 「バッテリーも回線用携帯電話も、一緒に支給されていた。……ここを拠点に」 「ああ……ここで腰を落ちつけると物資も手に入らないし不安が残るが…… 程良く開けているし、あの箱を遮蔽物に使えることを思うと、拠点とするべきだろうな」 地面に残っていた雀牌を、アタッシュケースに押しこむ。 こんなのでも一応は武器だ。捨ててしまうわけにはいかない。 ……拠点にこんなゴミを捨てたままにできないということの方が、今となっては大きいけれど。 「それに移動は危険も伴うし、時間も喰う。 無責任な発言で申し訳ないが、今は一秒でも早く作業を進めてほしい」 最後にサイコロを回収する。 彼女――沢村智紀に蹴飛ばされたサイコロは、その目を1に変えていた。 かつて渇望し、届かなかったその数字。 血溜まりをイメージする不吉な色のその数字も、今は自分の心を救う数字に見えた。 【残り30人】 第00話← 戻る →第02話 前へ キャラ追跡表 次へ 対局開始 加治木ゆみ 第10話 対局開始 沢村智紀 第10話
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【種別】 【初出】 Ⅷ 【登場巻数】 Ⅷ 【解説】
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拳王軍から逃げ出したマスク・ザ・レッドは、京都で一人の子供の首を刎ねて支給品を奪っていた。 強力な支給品を手に入れて体勢を立て直すためだ。 しかし、命惜しさに仲間を見捨てた時点で彼の命運は尽きていた。 次に彼が出会ったのは氷嵐の支配者と呼ばれる蒼き三つ首竜だったのだから。 そして、冷気の嵐が彼を葬り去った。 【一日目・15時40分/日本・京都】 【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】 【状態】健康 【装備】無し 【道具】とけないこおり@ポケットモンスター、支給品一式 【思考】基本:自然を汚す人間を滅ぼす。 1:グンマーの民のような人間は殺さない。 【野比セワシ@ドラえもん 死亡確認】 【マスク・ザ・レッド@ジャイアントロボ 死亡確認】
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「クソッ、どうしてうまくいかないんだ……!」 藤木茂はぼやいていた。 ウォルフガング・シュライバーに脅され、10人殺しの難題を押し付けられたのは良くはないが止むを得ない。 だから、一番弱そうな的場梨沙とその知人を付け狙おうと考えたのは良いが。 梨沙には奈良シカマルがいる。 雷になった藤木の相手ではないと思いたいが、シカマルの術は物理攻撃によるものではない。 流石の藤木もシュライバーとのやり取りから、ゴロゴロの力が特別な能力を無効化するかは微妙である事には気付く。 そうなると、あの影の術を無効化する方法がない。 雷速で動いて避ければ良いだけなのだが、藤木にそんな度胸はない。 とにかく、一度首を絞められ殺されかけた事がトラウマになっていた。梨沙は最優先で狙うが、それはそうとシカマルの名前が放送で呼ばれるまで待ってても良いんじゃないか? そして、ふと気付いた。 シュライバーは生首を10人分持って来いと言っていたが、何も全員殺す必要はないじゃないかと。 そこらで死んでる誰かの首を差し出したって、バレないんじゃないか? 数時間前、目の前で死んだ城ヶ崎姫子の事を思い出す。 本当に申し訳ないと思うが、今を生きる藤木の方が優先度は高い筈だ。彼女から首を失敬して、シュライバーに持って行こう。 戦いも流石に終わっているだろうと、恐る恐るかつての戦場へと引き返す。 「ど、何処にも城ヶ崎さんがいないじゃないか……ッ!」 もっとも、城ヶ崎の遺体はサトシとガッシュ・ベル達によって埋葬されている。 辺りを見渡したが、当然だが何処にも見当たらない。 藤木は焦る。貴重な時間を無駄にしてしまったのだと。 いつまでも、このエリアにいる訳にもいかない。シュライバーに提示された、期限が刻一刻と迫っているのもあるが、何よりもうじきここは禁止エリアになってしまう。 ────やっぱり、梨沙ちゃんを殺しに行けばよかった。 ────あの娘になら、僕は勝てるんだ。 そう考えつつも、梨沙が居たエリアも禁止指定されている。もうあの辺に居る事はない。 貴重な絶対に確実に勝てる相手を取り逃がし、何処へ向かったか見当もつかない。 シカマル一人に竦み、折角に機会を自ら手放した事に藤木は自己嫌悪に陥った。 「誰か…誰でも良いから、殺さなくっちゃ……」 藤木は焦燥感に駆られていた。 シュライバーの事もあるが、それ以前にここまで誰一人殺せていないのだ。 何をやっても上手くいかない。殺さなくては、自分が乃亜に殺される。 その恐怖が、思考をより単純で尖らせたものへと変えてしまう。 誰か殺せば、自分は生き残れるのだと。 実際には、藤木という男はきっと運が良いのだろう。一線を超えようとして、その事如くが未遂に終わっているのだから。 だが、藤木はそれに気付けない。気付かせてくれる人とも、未だ出会えていない。 己の幸運さを知らぬまま、彷徨っていると藤木は新たな参加者を見付ける。 変な牛に乗っていて空を飛んでいたが、速度は思いの他、ゆっくりだった。 普段の藤木なら、異様さを感じてスルーしていたかもしれない。 けれど、今の藤木は時間を無駄に扱い、焦っていた。 ────雷で下から狙い撃てるんじゃないかな? 一刻も早く、誰かを殺したい。 誰も殺せない自分は駄目な奴だ。そんな元来の卑屈さも相まって、藤木を後押ししてしまった。 掌を掲げて、大雑把に狙いを付けて、雷を放つ。 狙いは大分逸れていたが、予想より遥かに雷は拡散していき、まるで散弾のようだった。 それが、牛の引く戦車に直撃した。 ──── 「MOOOOOOOOO!!!?」 「────くっ……!」 敵襲にあったとキャプテン・ネモは瞬時に理解した。 神威の車輪による移動を選択し、危険が少ない空路を選んだまでは良かった。 距離の近さ。 そして神戸しおの容態。 休息は取ったとはいえエーテライト使用の影響を鑑みて比較的スピードを緩めていた。 出発前の声は元気そのものだが、やはりネモの背に掴まるしおの力は、少し弱弱しかった。 エーテライトもさることながら、殺し合いの開始が深夜である都合、ほぼ夜通し不眠にならざるを得なかったのも体力を削っていた。 だからこその配慮だったが、裏目に出たのだろう。 地上から、天に上る雷という世にも珍しい光景に出くわし、それは戦車へと直撃してしまった。 幸い、戦車の損傷は殆どないが、雷の威力自体は相当なものだ。 車体が揺れて、牛が動揺のまま暴れバランスが崩れる。空中で体勢が崩れたまま、ネモは地上へと不時着させる。 自分一人なら、アンバランスな空中でも戦車を御しきれたが、しおを後ろに乗せているのであれば別だ。 万が一にもしおが振り落とされれば、そのまま彼女は落下死してしまう。 一旦地上で、体勢を整えた方が良い。だが、それは地上で待ち構える狩人の狩場へ飛び込むことと同義だ。 「おめえ、何やってんだ」 しかし、問題はない。 何故ならば、こちらには宇宙最強の戦士が居る。 だから、ネモはしおについて全ての配慮を注いで、万全な安全策を取る事ができた。 「き…君達には悪いけど、ここで死んで貰うよ」 不時着した戦車の前に仁王立ちで立つ胴着の少年、孫悟空。 悟空の目に写る敵の姿は、藤木茂はあまりにもひ弱だった。 背丈は悟空より高いが、ごぼうのように細長い痩せた手足と紫色の唇。目つきも挙動不審。 はっきり言って、肉体的にも精神的にも軟弱だ。 当初、悟空も一切の気配を感じられないまま電撃の奇襲を受けた事で、気の操作に長けた強者が襲ってきたのかと身構えていたのだが。 真相はなんてことない。弱すぎて、気の探知が制限された悟空では、感知できなかっただけだ。 ただ、藤木にあまりにも見合わない能力だけが、異質だった。 (こいつ、どうなってんだ……。電撃だけは大したもんだけどよ) 恐らくは魔導士バビディのように、魔術などの特殊な力には長けているが、直接の戦闘はからっきしなタイプなのだと仮定する。 「喰らえッ! フジキブレイク!!」 藤木が両腕を広げ、壮大なポーズを取ると両手の掌から電撃が放たれた。 古来より人が恐れた自然災害の一つ。 叡智を重ねた人間ですら、未だ御しきることが出来ない雷。 それを一人の人間が振るう事があれば、神の御業とも呼ばれるだろう。 触れれば、人間など一瞬で黒焦げた煤に変えてしまう高圧電流。 サーヴァントであるネモですら、直撃は避けなければ不味い一撃。 「……やめとけ」 悟空は僅かに眉を歪ませ、そして軽く腕を払う。 たったそれだけで、電撃を散らしてしまった。 幾度となく地球を救い、神の領域すら超えた悟空にとって、制限されていても電撃程度では虫に触られた程度のダメージにもならない。 「こ、この……!」 両者の間にあった数メートルの距離が、瞬きの時間も掛けず詰められる。 藤木の目と鼻の先に悟空の顔があった。 次の瞬間、鳩尾に衝撃が走る。悲鳴と恐怖で引き攣った顔で、藤木は慄くが痛みはない。 「ッ……」 悟空の拳を流れる電流。 藤木の体は自然系の力により、流動する雷のものへと変貌している。 物理的な攻撃で、藤木を傷付ける事は出来ない。 「そ、そうだよ……僕に、攻撃は────」 藤木の言葉が最後まで口から零れる事はなく、光弾が藤木を吹き飛ばす。 悟空は打撃が効かないと見るや、腕を引き、拳を解いて手を広げ、溜めた気を放った。 「そこそこ気を込めれば、その体にもダメージは与えられるみてえだな」 「か、かはっ……ごほっ……!?」 腹部に強い打撲感を受けて、地べたを転がりながら藤木はのたうち回る。 悟空がその気なら、藤木の腹をぶち抜いて臓器の大半を消し飛ばしていた。 加減に加減を重ねた、最弱の威力でこの有様だ。 物理攻撃に耐性があろうと、抜け穴はいくらでもある。それをカバーする頭の冴えもない。 どう見積もっても、藤木がこの殺し合いで勝ち抜くのは無理だった。 決して悟空は口にしないが、しおのが立ち回り次第ではまだ可能性があるくらいだろう。 「はァ……は……っ、ぼ…僕は、フジキングなんだ……! 神(ゴッド)・フジキングなんだぁ!!」 痛みに耐えながら、一分程時間を掛けてよろよろと立ち上がり。 自分が持てる全てを出し切ったと、思い込んだ精一杯の電撃。 悟空は立ち尽くしたまま、それに飲み込まれていく。 やった。あいつは、自分に何も出来ずに負けたんだ。そうやって、藤木が悦んだのも束の間。 「ぐっ……!」 電撃をほぼ無傷で突っ切った悟空の、”気”を込めた拳が藤木の体の実体を捉え、腹に減り込んでいた。 「ごっ……! ぐ、ご……ォ……」 藤木に血一つ流させない事に、心底苦労したであろう手心の加えられた一撃。 それでも、藤木にとってはあまりにも差が開いた彼我の実力に、屈するほかなかった。 全身から力が抜け、膝を負って藤木は嘔吐する。 不幸中の幸いなのは、ここ数時間何も食べていなかったので、逆流する内容物がなかったことか。 唾液を飛ばしながら咳き込み、藤木は蹲る。 「ど、して……だ……どうして……」 涙が流れ、鼻水を垂らして藤木の顔はぐちゃぐちゃに汚れていく。 悟空はおろかネモや、遠目に見ているしおですら惨めで滑稽にすら写る、哀れな男の姿だった。 それが憐れみであり、嘲りであろうと。 これ以上、藤木に攻撃的な意志を持つ者は誰もいなかった。 あまりにも、弱くて愚かで阿呆な生き物を目の当たりにして、憐れみが勝ったのかもしれない。 「くそ……くそっ……」 悔しかった。悔しかったが、それでも藤木には何処かで分かっていた事だった。 古畑任三郎が、殺人容疑を掛けられた今泉慎太郎を擁護した時と同じ理屈だ。 人を殺すなんて大層な真似、そんな度胸も頭脳も自分にはない。 土台無理な話だったのだ。そんなこと、藤木本人が一番良く理解していた。 「だ、けど……誰も、助けて、くれないじゃないか……」 「……おめぇ」 仮面ライダーやヒーロー戦隊はお芝居だ。 殺し合いに巻き込まれた時、的場梨沙達を襲撃した時にそんなことは痛感していた。 本物のヒーローが居れば、きっと海馬乃亜に逆らったあの兄弟が殺されることはなかった。 その前に助け出されて、誰の犠牲もなく、こんな多くの死亡者も出さないで済んだんだ。 「ひ…ヒーロ、が…居ないなら……僕が、僕だけの……なるしか…ないじゃないかぁ……!!」 泣きじゃくり、錯乱したかのように叫んで腕を振り回して悟空に突っ込んでいく。 本当にただの子供だった。 フリーザやセルのような、悪事を好み、自分の意志で非道を働く悪人達と違う。 こいつは、ただ死ぬのが怖くて怯えてるだけだ。 ───大丈夫だ。その間に死んじまった奴は、ドラゴンボールで必ず生き返らせる。 少し前にネモに言った言葉が、悟空に返ってくるようだ。 普通の子供は、普通の人間は死ねば一度っきりの人生を終わらせるしかない。 二度目なんて存在しないし、だからこそ良くも悪くも自分の命が終わるその時まで精一杯生きている。 悟空は、自分の考えが間違っていると思わない。切札であるドラゴンボールがあるのなら、それは積極的に活用すべきだ。 感傷的になって、ネモの計画にズレが生じて殺し合いを打破できず、全員死んで蘇れない事こそが最悪の結末だと分かっている。 「ぐぎゃっ……!」 向かってきた藤木を気を込めたデコピンで弾く。 手応えがまるでない、ないからこそ悟空の中で複雑な感情の縺れが生じる。 理屈では合理的になるべきだと分かっていながら、自分が一か所に留まるせいで多くの子供が犠牲になっている。 ドラゴンボールなら、全てを巻き返せると分かっていても。 「だ、誰か……」 「なっ!?」 その僅かな感傷が、悟空にとって最悪にして最大の隙を生んでしまった。 『誰か、助けて下さああああああああああああああい、誰かああああああああああああああああ!!!!』 藤木はランドセルから、拡声器を取り出し大声で叫ぶ。 もう、やけくそと行き当たりばったりだった。 ヒーローなどいないと悟りながら、それでいて他人頼りの思考回路。 どうにもならない強敵の出現に、藤木はまだ見ぬ誰かに希望を託したのだ。 「────ッ!!」 ネモが水流を巻き起こし、藤木の持つ拡声器を奪い取る。 奪い取ったのは良いが、既に藤木の叫びは拡散されてしまった。 それも、音量をマックスにしたおかげで広範囲へと拡がっている。 「ネモさん、これって……」 黙って事態を静観していたしおが口を開く。 幼い彼女でも分かっていたのだ。 この叫びは、少なくない数の参加者に聞かれているだろうことは。 それが、どのような結果を齎すか。 殺し合いに否定派の対主催が集まるのならまだいい。だが、肯定派のマーダーに包囲でもされれば、たちまち地獄絵図が出来上がる。 同じくマーダーのしおからしても、他人事ではない。 「悟空、早く────」 「何処へ行くの?」 冷たく投げかけられたその声に、ネモは悪寒を覚えた。 この場に居る誰のものでもない女の声。 振り返れば、黒のドレスを着た銀髪の幼い少女がいた。 「ようやく、人に出会えたんだもの」 見た瞬間、容姿と中身の差異にネモは気付く。 可憐な見た目に反し、少なく見積もってもサーヴァントに匹敵、それを打破し得る実力の持ち主だ。 カルデアに向かう、その寸前でよりにもよって拡声器を使われ、それでいてこんな奴まで呼び寄せる羽目になるとは。 ネモはたまらず、藤木を一瞥して、藤木は自分でしでかしたことを忘れているかのように短く悲鳴を漏らした。 ──── フリーレンとの交戦後、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターは人の影も見当たらないまま彷徨っていた。 交戦の後と見られる痕跡は節々で見つかるのだが。 放送を迎え、更に数時間経っても誰とも遭遇出来ずにいる。 強いて言えば道中、あの虫ガキ、インセクター羽蛾が付けていた特徴的な眼鏡が、ボロボロの状態で転がっていた事か。 何だ、殺そうと思っていたのに先を越されたのか。 特に何の感傷も持たないまま、眼鏡を踏み潰す。 地図を見て気になったのが、ホグワーツ魔法魔術学校だった為に向かってはみたが、こうも誰とも出会えないとは思わなかった。 最終的に優勝さえ出来れば、他の参加者で勝手に潰し合うのは構わないが。 こうもニアミスをしてると思うと、退屈にもなる。 もっとも、魔術の知識をかき集めた施設としては、ホグワーツに勝るものもない。 時間つぶしには最適だ。 この時だけは、世界への憎しみもヴェラードへの愛慕も忘れて。 純粋な魔術への探求、その知的欲求に従い、ホグワーツを探索しようと思ったその時だった。 『誰か、助けて下さああああああああああああああい、誰かああああああああああああああああ!!!!』 ようやく聞こえた人の声だ。 無視しても良いが、ここまで退屈だったのもある。 少し、首を突っ込んでこれまでの退屈の憂さ晴らしをしても良いだろう。 悪辣な魔女の笑みで、リーゼロッテは声の方角へ向かった。 「貴方……人間じゃないわね。ただ、死人とも言い難い。……英霊か」 日本のある土地を使い、英霊を呼び出し使役し競い殺し合う、戦争の儀式があると風の噂で聞いたことがある。 なるほど、目の前にいる最上級の神秘を目にすれば、強ち与太話ではなかったのかもしれないと認識を改めねばならない。 「ッ……」 ネモを見て、通常の人間でないことを見抜かれた。 「君は魔術師(キャスター)か」 ネモの知るそれはとは違うが。 リーゼロッテはネモの見てきた魔術師とは、異なる感覚を覚えていた。 悟空との話し合いで、平行世界の可能性には行き付いていた為に、同じ魔術師でも別の系統の発展をした魔道を収めた者ではないかと推測する。 ただ、いずれにしろ。魔術師としては、極上であることに違いはない。 首輪解析の協力者として可能なら、こちら側に引き込みたいのが本音だが。 フランドール・スカーレットのように説得が通じる相手とは思えない。 彼女ですら、説得するのに非常に骨が折れたというのに。 何より、ネモ自身がリーゼロッテを好ましく思えないのもあるだろう。 ああいう目は、何度も見てきている。弱いものいじめを嗜好として愉しむ輩だ。 「一応聞いておくけど、僕達は殺し合いに乗っていない。 首輪を外す方法を探している。出来れば、君程の魔術師には協力して欲しい」 個人的に決して相容れたくないが、事態が事態だ。 猫の手も借りたいのも確か。 少なくとも、乃亜によって拉致され殺し合いを強制されたという点では、同じ立場だ。 協力を打診する程度は試しておきたい。 「……興味ないわね」 リーゼロッテはそう言って、手をネモへと向けた。 「私にとって、貴方達は人類を滅ぼす前に死ぬか、その後で死ぬか。どちらかでしかないもの。 乃亜に逆らう理由がないわ」 「……そうか」 その瞳は、カルデアのマスターと正反対のものなのだろうとネモは思う。 魔術師らしく、己の悲願と宿願にのみ固執し、それ以外を無慈悲に切り捨てられる。 切り捨てようとするものを、見ようともしない。 その在り方は。皮肉な程に対照的だ。 ああ、それならば。 人理保証の旅路を共に歩んだ英霊であるネモにとって。 決して、相容れない相手なのだろう。 「────だから、消えなさい」 火球が放たれる。 「ッ────!!」 ネモは水流を巻き上げ、火球へとぶつける。 高温の炎に水が触れた事で、蒸気が霧のように巻き上がり視界を白く染め上げた。 これもとんだ皮肉だ。 相容れぬ者達の扱う力が、そのまま火と水なのだから。 「海水? ……海神の権能かしら」 ネモの力に感心しながら、リーゼロッテは微笑む。 炎に対し水というアドバンテージを取られながら、一定の威力を相殺したに留まる。 火球は勢いを殺されながら、ネモへと吸い寄せられていく。 ただの人間を殺すには有り余る威力を維持し、サーヴァントであってもダメージを反映させるには十分な一撃。 「MOOOOOO!!」 牛が咆哮と共にネモを乗せ、空へ跳び上がる。 リーゼロッテの頭上から4発、銃声が響き弾丸が飛来する。 ネモの扱う454カスールカスタムオートマチック。 人間ではなく、吸血鬼を滅ぼす事を想定した狂った性能を誇る。 常人が受ければ、ほぼ致命傷となるだろう馬鹿げた火力と、ふざけた反動は普通の人間が扱う事を考えて設計されていない。 しかし、戦闘向きでないとはいえ、サーヴァントたるネモは反動を極力抑えた上で精密な射撃を行い、眉間、胸、腹、的確に人の急所を撃ち抜いた。 「銀を溶かした弾丸か、残念だけれどそれじゃ私は滅ぼせない」 体に複数個所、穴を空けられてもけろりとした顔でリーゼロッテは笑みを作る。 これが恐らく、この女の誇る一番の特異な力なのだとネモは察した。 不死身。 乃亜の言うハンデにより、恐らくは首輪の周辺は制限されており弱点化しているか。 不死性に制限を設け、再生力に限度があるはずだが。 それでも、銃弾数発程度では致命傷にはならないらしい。 確実に、人の生命活動に必要な臓器を穿ったというのに、気味の悪い話だった。 「これだけで、終わりじゃないでしょう? 何処の英霊様か知らないけれど。 世界にその名を刻んだ英雄が、この程度では拍子抜けだわ」 「生憎、僕はそういった柄ではなくてね」 牛の背に乗りながら、空を撹乱するように舞い水流を叩き付ける。 リーゼロッテは気だるげに手を上げ、炎を呼び起こす。 それらは無数の細長い虫の手足のように蠢き、四方八方から襲い来る水流を灼熱で蒸発(もや)し尽くす。 「見た目通り、可愛らしいのね。お水遊びと鉄砲ごっこがお好み?」 「つまらなければ謝るよ。代わりに────」 蒸気の中、揺れる人影に気付きリーゼロッテは構えた。 頬に打ち込まれた右ストレート。 防御が間に合わず、直撃を受けて血反吐を撒きながら吹き飛ぶ。 「拍子抜けの僕よりは、彼の方がお気に召すだろう?」 首が捻じ曲がるかと思う程の打撃の衝撃。 「だりゃあああああ!!」 吹き飛ばされた先へ一瞬で肉薄し、体勢を持ち直したリーゼロッテが振るう黒い爪の動きを見切って捌く身のこなし。 リーゼロッテも戦いには向かない無垢な幼女の容姿に反し、格闘戦も高い実力を誇り、かつて自らを討伐しに現れた禁書目録聖省(インデックス)の使徒。 その中でも、徒手空拳や剣技に長けた猛者どもを相手取り、格闘戦で終始圧倒し続ける程だ。 生半可な打撃ではリーゼロッテに触れる事も叶わぬ筈が、悟空の放つ拳の連打にリーゼロッテは圧され続ける。 (ッ────こいつ、あの胴着の……) ガードに使った腕が一撃を受けるだけで、骨が砕けくの字に圧し折れる。何発もの拳はリーゼロッテの不死の再生速度をも凌駕する程に、体に傷を刻み込んでいく。 この膂力の高さ、そして容姿も含めて数時間前に交戦した悟飯という少年と瓜二つだ。 「全く、厄介だわ!」 全身を炎で包み、悟空が僅かに退いたのを見て、リーゼロッテも距離を取る。 広範囲へ拡がるように、炎を拡散し幕のように放つ。 「波ァッ!!」 悟空が気合を発し、炎は豪風に吹かれたように裂けて、悟空達から逸れて炎の向こうに居るリーゼロッテを露わにする。 突貫してきた悟空の拳が迫るのを、空へ飛翔して避ける。 悟空も一気に跳躍し追随した。 「肉弾戦以外にも、器用な男……」 空中で殴打を一ついなす間に、数発打ち込まれ、剣戟すら容易に止めるリーゼロッテの黒爪を難なく避けてみせる。 しかも、リーゼロッテのように空中を浮遊する術すら持っている。 「ッッ────!!」 悟空の打撃が連続してリーゼロッテに直撃し、地上へと叩き落とされる。 ひしゃげた手足を、一切意に帰さず立ち上がり飛び退く。 肉体の頑強さも大したものだが、悟空の操る力も目をはるものがる。 恐らく、気功術の類だろう。数千年前に、中国の医学として発祥したと聞いたことがあるが。 東洋の知識には明るくない為に、断定はできないものの、そういった類の力には違いはなさそうだ。 研磨し尽くした肉体と、気の操作と総量はあのフリーレンの魔力量をも上回るかもしれない。 制限さえなければ、冗談ではなく惑星すら砕くかもしれぬ程。 「羨ましい物ね。それだけの力があれば、私も手間のかかる大規模魔術などに頼らず、既に人類鏖殺を成し遂げていたというのに」 「じゃあ元から、おめえには無理だってコトだろ」 「……言ってくれるわ」 悟飯の方が潜在力と爆発性は高く、瞬間風速では悟空をも超えるのだろう。 だが反面、強さや精神性にムラもあった。戦いの駆け引きも、姦計に長けたリーゼロッテならば優位に立てるだろう。 悟空は反面、強さとしては完全に上限に達しており、完成され過ぎた故に制限さえ解けなければこれ以上の力はないだろうが。 戦いの技量も心構えも成熟し、安定した強さを誇っている。 見た目以上に歳も重ねたのだろう。 老練されたこの戦士を陥れるのは、800年に渡り世界に災厄を撒き続けた魔女であっても容易ではない。 「それもやりようか」 両足と左腕の再生を終え、残った圧し折れた右腕を片手で掴み引き千切る。 悟空も僅かに目を見開き、ネモは驚嘆し咄嗟にしおを抱えて、その目を掌で覆う。 藤木はあまりに光景に、声を上げることすら出来ず腰を抜かす。 「おめえら、下がってろ!!」 リーゼロッテは千切った腕をゴミのように放り投げ踏み潰す。 人ならぬ人外の怪力で潰された腕は血飛沫と、二度と血の通わない肉が飛散する。 それらが飛び散りながら、それぞれの肉片に足が生える。 グロテスクな人の一部だった部位は、意思を持ったように蠢き、足の他に虫のようなフォルムを形作っていく。 鈍い機械的な羽音、数匹の巨大な虫に形を変えた肉片は羽ばたき悟空達へと向かう。 「────!!」 誕生経緯を除けば、虫そのものに奇怪な点は見られない。 人肉程度なら容易く食い破るだろうが、悟空はおろかネモを殺すには不足している。 だからこそ、警戒する。 こちらの間合いに入る前に、一斉に気弾を打ち込み消し飛ばす。 「っ……!!?」 気弾が虫に触れる寸前、独りでに虫が起爆する。 灼熱と爆風に顔を庇いながら、悟空は視線だけは外さない。 この程度で悟空を殺せるとは、リーゼロッテも思っていないはずだ。 殺傷力は高いが、所詮は目晦まし。 ネモもしおを連れて、牛を駆り退避している。こんなもので、殺せる者など────。 「居るわよ。一人虫けらが」 「ッ……」 心を読むように、リーゼロッテが告げる。 ただ一人、誰の加護も受けずない弱者がいた。その事に悟空も気付き、爆風の中を突っ切る。 「ひ、いいいいいい!!?」 藤木の周りを2匹の虫が飛び交う。 虫という生理的嫌悪を催すデザインと、何より道端で時折見る死骸に集まるような挙動が、自分は今餌になっているのだと錯覚させる。 ゴロゴロの力を使えば、この程度の窮地は切り抜けられるが。 パニックに陥った藤木に、そんな発想は消え去っている。 例え力だけ身に着けようが、扱う者の実力が伴わなければ宝の持ち腐れだった。 「動くんじゃねえぞ!!」 虫と藤木の間に割り込み、気を展開し簡易的なバリアを作る。 刹那、起爆する虫の爆破は、悟空と藤木を避けるように爆炎と爆風は逸れていく。 「あ、あの……」 強大な力の前に、あんな禍々しい虫たちの前に飛び出して、自分を庇ってくれた悟空の姿は本当のヒーローのようだった。 こんな自分でも守ってくれるなんて。 「まさか、こんな思った通りに庇うだなんて」 藤木に差し込んだ、何かの光明を嘲笑うような魔女の笑いが響く。 煙の立ち込める中、一筋の光線が瞬く。 一直線に悟空に向かって奔るそれを避けるか。 一瞬、眉を歪ませ悟空は後ろの藤木を一瞥し、気のバリアをより強化した。 「ッ、ぐ、────!?」 想定はしていた。あの光線は悟空の知る中では、気円斬に近い技だ。 格上にも通用し、制限下の悟空ならば当たり所によっては致命傷も与えられる。 避けても追尾する機能も持たせているように見える。 一人ならともかく、藤木を抱えてあれとチェイスするのは厄介だ。 一度バリアで防ぎ、藤木を自分から離してから改めて、別の対処を行う。 初見でそこまで見抜く悟空の慧眼は、非常に優れていたと言えるだろう。 「ぐあああああああ!!!」 だが、光線はバリアを突き抜け、悟空の右肩を貫通した。 「え、え……?」 「悟空ッ!?」 悟空の肩に空いた傷口から漏れた血を見て、藤木は放心状態になり。 ネモはあの悟空が後れを取った事実に驚嘆する。 「人を殺す魔法(ゾルトラーク)」 名の通り、人間を殺傷することに長けた魔法であり。 その突出した性能は貫通。あらゆる鎧も防御も、貫通する事で多くの人を殺めた防御不可の魔法。 悟空の見立ては、ほぼ誤ってはいなかった。ただ、藤木の安全を憂うあまり、守りの一手に偏り過ぎたのだ。 「…あの女……い…良い技持っていやがる……!」 だらりと垂れた腕を見て、悟空は舌打ちする。 腹は立つが、人を殺す魔法を生み出した奴は本物の天才だと、心底感心している自分も居る。 リーゼロッテも、誰かの使った姿を見た模倣(ラーニング)で放ったのだろう。 精度は本家よりも遥かに劣っているに違いない。 でなければ、確実に急所を撃ち抜かれて死んでいた。 「……そこだけは同感ね。良い魔術だわ。 この術式は、美し過ぎる」 悟空の分析通り、フリーレンの使う魔術を見よう見まねで解析し、編み出した模倣品だ。 本来、世界も違い別系統の発展をした魔法を瞬時に真似る等、リーゼロッテの技量でも不可能に近い。出来たとしても、真似事でしかないが。 だが、ゾルトラークには最大の長所(けってん)がある。本来、呪いと呼ぶべき理解不能な高みの魔法でありながら、人類でも理解し扱えてしまう程、洗練され過ぎた術式構造をしていたこと。 しかも、人類が半世紀を掛けこの魔法を克服する研究に費やし、洗練された術式はより洗練を重ね過ぎて、一般攻撃魔法と称されるまでに昇華されてしまった。 その高すぎる汎用性は、例え真似事であろうと一定の効果を再現されてしまうほどに。 (本当に、劣化に劣化を重ねた劣悪品だけれど……。 連射も速射もできない、精密性も悪い。一度きりの騙し討ちといったところね) 二度目は通じないことを痛感しながら、戦果としては上出来ではあるだろう。 「そろそろ幕引きにしましょう」 再生を終えた右腕と共に左腕も掲げ、リーゼロッテの両手に特異な力が集約していく。 魔法陣が展開され、黒い輝きが集約していく。 紫電のようなスパークが蠢き、暴力的な力が今かと溢れ出すようだ。 「……あ…あそこに居る。ネモって奴のとこまで、走って逃げろ」 悟空は脂汗を浮かべて、低い声で言う。先程藤木を圧倒した余裕は感じられない。 「……え、ぇ…む、無理…腰が……」 「早くしろッ! 死にてえのかッ!!!」 温厚で穏やかな風貌から一転し、鬼のような怒声を浴びせる。 リーゼロッテは悟空諸共、この場の全員をあの世に送るつもりだ。 彼女の溜めた力には、それだけの威力が含まれている。 余裕が消え、焦りと苛立ちから崩れた声色に藤木は真っ青になった。 「ひいいいいいい!!!?」 抜けた腰のことなど忘れ、無我夢中で転がるように走り出す。 「ネモ、そいつ連れて、こっから出来るだけ離れろ!!」 「……分かった」 悟空と同じ結論に至ったネモは静かに頷く。 仮面の力を借りて悟空に加勢すれば、リーゼロッテを滅ぼす事も出来るかもしれないが。 今、自分の命を燃やすべきはここではない。 「悟空お爺ちゃん……」 「口を閉じるんだ。舌を噛む」 走ってきた藤木の胸倉を掴み戦車に放り投げて、ネモは牛を駆り空へと昇っていく。 この瞬間のみは魔力の消費など考えず、全速上げて。 「逃げられるとでも? 無駄よ。全員、ここで死ぬんだから」 動きそうにない右腕は下を向いたまま、左手を腰に沿えて構えを作る。 青い光が瞬き、悟空は意識を集中させる。 「Azi Dahaka(アジ=ダハーカ)」 リーゼロッテと同じく魔術結社「トゥーレ」に所属する地球規模の魔術師。 「憤怒」(ツォーン)の名を持つ、黒羊歯鼎の最大魔術。 世界を滅ぼすような、馬鹿げた規模の大魔術を、本来の担い手であれば、溜めと詠唱を必要する手間を一切省き。 石ころでも投げるような気軽さで、リーゼロッテは放つ。 「かめ────はめ……」 集った光球は弾け、雷のような曲線を描き悟空とその後ろのネモ達へ向かう。 「───波ァァァァ!!!」 青の光は場ぜて、極大の光線となり黒い光と激突する。 空間が捻じ曲がり、舗装された街路は紙細工のようにコンクリートが捲れ、粉砕されていく。 近くの木々も建造物も全て薙ぎ倒し、粉々になった破片が巻き上げられては塵に還っていく。 「片腕では、その程度か」 「く、ぐ、くく……」 乃亜の制限という枷を嵌められたうえ、スーパーサイヤ人への変身を禁止され。 片腕のみで放ったかめはめ波は、膨大な魔力の塊と拮抗しつつ徐々に圧され出していた。 傷から溢れ出す血と痛み、何より腕一つで全ての負荷を支える行為に無理が生じている。 「馬鹿な男、貴方一人ならどうとでもなったでしょうに」 片腕を潰したとはいえ、リーゼロッテもそれで勝てると甘く見ていない。 自分の最大魔術ではなく、他人の猿真似を行ったのも詠唱や溜めを必要としない速さを優先したからだ。 悟空がネモ達を守ろうとしなければ、別の方法でこれも突破された可能性は高い。 「貴方は私が見てきた中で、最も強く、そして甘い戦士だったわ」 黒い魔力はかめはめ波を侵食し、悟空に今にも喰らい付かんと迫っていく。 「くッ……」 厄介な相手だが、この段階で始末できたのは幸運だった。 もしも、あの悟飯や他の強力な対主催と手を組まれれば、リーゼロッテにも手が負えなくなる。 足手纏いを連れている内に接触し、殺せたのは優勝に向けた大きな前進になるだろう。 「…………く…くそったれめ……!!」 悟空の放つかめはめ波が半分以上消失し、黒い魔力が覆い始める。 「…………か、っ……」 その圧に膝を折り、顔を項垂れ毒づく姿は無様でもあった。 「か…い…王……拳、ッ……!!」 だが、急激に勢いが増し押し返される。 悟空を纏う白いオーラが一転し、真紅のオーラを放ち。全身が沸騰しているかのような、パワーが溢れ出している。 「なに───」 リーゼロッテの手から伝う力は、先程の比ではない。 2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍……。 「……10倍、だァっ!!!」 10倍の規模にまで膨れ上がったかめはめ波は、黒の光を青く染め上げリーゼロッテへと向かう。 幻燈結界(ファンタズマゴリア)は───使えない。 フリーレンに使用した際にも感じていたが、使用にインターバルを設けられている。 ならば最大魔術の始原の焔(オムニウム・プリンキピア)か? いや、発動が間に合わない。 「───ッ、ぐ……」 気の濁流に魔術ごと跳ね返され、リーゼロッテは飲み込まれていく。 その姿形が跡形もなく見えなくなるまで、悟空は気を放出し続けた。 「は、ァ、は……はァ……」 ズキズキと全身に痛みが走る。これはかつて、地球を襲来してきたベジータとの交戦時、当時は限界だった界王拳4倍を引き出した時の現象に似ている。 後に克服した反動だったが。 あの時ほどではないが、制限された現在の悟空にとって、限界に近い力を発揮したということだろう。 「あ…あのクソガキ…もうちっと、は…ハンデが緩くても良いんじゃねえか……?」 制限を設定した乃亜に毒づくが、殺し合いに積極的ともいえない悟空を優遇する理由もない。 それよりも、全身の疲労感にも参るが、肩の傷の容態も芳しくはない。 これを放っておくのも不味いか。 本来向かう予定だったカルデアという施設は、戦闘行為も必要となるマスターのサポートも充実していたとも聞く。医療設備も最低限は設置されているだろう。 マーダーが集まる事も考慮しつつ、気配を消してネモ達と再合流すべくカルデアに向かう。 「ッ───!!?」 方針を定めた次の瞬間、耳障りな羽音共に数匹の虫が飛来する。 見覚えがある。リーゼロッテが生み出した使い魔達だ。 そして、この次に拡がる光景も予想が出来る。 「あ…あの野郎───!!」 戦闘後、界王拳の反動も無視出来ない中で、飛来した虫たちを弾き落とす術はなく。 虫たちの起爆に巻き込まれ、悟空は片腕で顔を覆い、全身に気を張り巡らせ防御力を引き上げるしかない。 だが爆破の勢いに煽られ、望まぬ方角へと吹き飛んでいく。 焦りに駆られながら、それでも今の悟空はその爆風に流されるしかなかった。 ─── 「……とんだ化け物が居たものね」 半身と顔の半分が消し飛び、普通であればとっくに息絶えているような致命傷だった。 リーゼロッテも一瞬、死を思ったが、この殺し合いの中で急所となる首回りの損傷を避けられたことが幸いした。 大きく飛ばされ、軽くないダメージを負ったが生きている。 もっとも、憎しみと怒りに塗れた800年の人生に終止符を撃てなかった事は、彼女にとって本当の意味では、不幸だったのかもしれないが。 「あの程度じゃ死なないでしょうけど……」 千切れた肉片を虫に変え、悟空へと向かわせ爆破させた。 いくら悟空と言えども、大技、しかもあの界王拳という技はドーピングの類だ。 一時的に爆発的な強化を受けられる代わりに、反動も桁違いに大きい。 あの負担を考えれば、それなりに効果はあるだろう。 「……少し、疲れたわ」 悟空の強さも埒外だったが、もう一人僅かな会話をした程度だが。 ネモの目も嫌に印象に残った。 きっと、自分とは異なる旅路を歩んだのだろう。そんな目だった。 それが心底気に入らない。 あの目は、人類の愚かしさも醜さも知っている。ただの小童のものではなかった。 世界に名を残した英霊であれば、当然だ。 それでも尚、世界を最後には肯定した。肯定させるだけの誰かに出会えたのだ。 どんな旅路の最果てを迎えたか、知らないが。きっとその最期は───。 「どうでもいいことよ」 ただ一人、愛した男にすら否定された自分とは雲泥の差のようだ。 自虐的に嘲笑しながら、リーゼロッテは肉体の再生を待ちつつ、壁に背を預ける 悟空のかめはめ波を喰らって、大分離された。今からネモ達を追っても何処に居るか分からない。 今は回復に務めた方が、賢い選択だろうと瞼を閉じた。 ─── 『妙な真似をしたら、君を殺す』 『僕は悟空程、優しくない』 冷たく、威圧感を込めて藤木を牽制し、ネモは戦車を駆る。 カルデアへの距離は近づいており、魔力を豪快に回しても息切れもなく辿り着けそうだ。 今のところ、別の参加者とは一切接触していない。 藤木が拡声器を使ったのが、カルデアでなかったのが幸いか。 少なくとも、カルデアが戦火の中心になることは当面はなさそうだ。 (ただ、あまり時間は掛けられないな) 首輪の命令プログラムの作成も、可能であればカルデアで腰を据えて行いたかったが。 周辺の参加者の集まり方によっては、そうもいかなくなる。 カルデアではないにしても、その近くで拡声器を使われたのも事実で、その近辺でカルデアは目の付く施設だ。 ここまで足を運ぶマーダーが居ないとも限らず、最高戦力の悟空とも逸れてしまった。 必要な事とは言え、そんな状態で、プログラム作成に時間を割き続けるのも危険だ。 (悟空にも念のために、データの控えは持っていて貰ってるけど……) もしも、自分が死んだ時、今回のような不慮の事態に合った時に備えて。 首輪の解析データはメモに全て控え、それを悟空に託してある。ネモの方針や考察も全て交えて。 運が良ければ、逸れた悟空が別の技術者や優秀な魔術師と合流して、別個に首輪の解析プログラムを開発してくれるかもしれない。 (出来れば、あの声を聞いて対主催が集まってくれれば……) リスクを飲み込みながら、僅かな好機にも期待しつつネモは牛を駆る。 正直な考えでは、しおの他に藤木まで見張る余裕はない。 ネモ・シリーズにより実質複数人になれるとはいえ、首輪の解析に集中したいのに、藤木に割かれるリソースは無駄と言わざるを得ないが。 その身に宿した能力だけは面倒極まりない。 ネモでも鎮圧は出来るが、余計な事をされたら後々に響きそうなのが質が悪い。 しかも、通常の拘束は流動する体に通用しそうにないのも厄介だ。 自分以上に機械や魔術に詳しい参加者ならば、首輪の解析を任せて藤木はネモが見張る。 逆にそうでないなら、事情を話して藤木を見張って貰う。 とにかく、人手も欲しかった。 ───今なら、二人纏めてやれるんじゃないか。 後ろからネモの表情は読み取れないが、何となく背中から必死な感じは伝わってくる。 きっと自分の動きにも気付かない。そんな感じがする、 藤木は、ようやく千載一遇の好機が回ってきたと思った。 これで首が二つ手に入る。これを5回繰り返せば、10個なんてすぐだ。 ───や、やれるぞ。僕はやれる。これで僕はシン・神・フジキングになれるんだ。 いつだって殺せる。後は心構えだけだ。 大丈夫、ここにシカマルは居ない。自分をボコしたドロテアも居ない。死ぬほど強い悟空も居ない。 悟空に比べたら弱そうなネモと、それより遥かに弱そうな女の子だけだ。 ───この娘、梨沙ちゃんよりも弱そうだ。 ───こ、この娘の友達も居れば、簡単に殺せそうだぞ……。 何だか分からないが、希望が見えてきた。 本当に10人殺せそうじゃないか。 シュライバーが仲間になってくれれば、怖い物なんて何もない。 永沢も一緒に守って貰えて。あとは、シュライバーが何とかしてくれる。そうだ、きっとその筈なんだ。 と、とにかく、殺してしまおう。か……覚悟の準備は、じゅ、十分取ったんだ。 震える手で、藤木は腕を上げて。 「っ、ぇ───」 しおが振り返っていた。じっと、ぱっちりと開いた奇麗な瞳で藤木を見つめている。 何てことない眼だ。 ゴロゴロの力がなくとも、絶対に藤木の方が強い。 しおとタイマンを張れば、藤木が勝つ。強いのは自分なんだ。 そう言い聞かせて、でも藤木は電撃を放つことができなかった。 (……この人) どうして、殺し合いに乗っているんだろう。 たまらなく、しおにとっては不思議な事だった。 しおだって、好きで人殺しがしたい訳じゃない。ただ、そうしないといけないから。 火に囲まれて、残された退路もなく。 屋上で二人、松坂さとうと飛び降りるしかなかった。 そんな最中に、乃亜に自分だけ連れ去れてしまった。 二人で永遠に一緒になる事すら許されないのなら。何が何でも、例え乃亜の思惑通りでも、さとうをあの場から救い出すしかない。 その為には、優勝するほか手段はない。 これ以外に方法がないから、愛を守る術がないから。だから、しおは殺し合いに乗っている。 今の自分の持てる手段で殺せるかはともかく、本音を言えばネモも悟空の事だって、好き好んで殺したいだなんて思わない。 いずれ敵対するとしても、自分に良くしてくれた人達だ。 叶うことなら、ずっと仲良しでいたい。 (殺す必要なんかないのに) 他の人が優勝を狙う事を否定する気はない。自分が絶対に正しい訳でもない、みんな我儘を通そうとしているのは同じだから。 幼いしおにもそれ位は分かる。 分かるからこそ、藤木はどんな我儘を抱えているのか、いまいち伝わってこなかった。 ヒーローがどうとか言っていたけど、それならもう願いは叶っている。これ以上ない程に───。 孫悟空以上のヒーローなんて、この島に居るとはしおには思えなかった。 しかも、そんなヒーローが自分の味方になってくれて、守ってくれるのだから。 願いが叶った、真っ当な幸福者(しあわせもの)が、じゃあなんでまだ殺し合いに乗るのか、本当に意味が分からない。 「……何がしたいの」 何の感情も籠っていない。 だからこそ、藤木に突き刺さるような鋭利な声だった。 きっと、ネモにも聞こえないような小さな声だったのに。 藤木の耳には、一字一句聞き洩らす事無く鼓膜に響いてくる。 「ぁ、ぁ……っ……」 藤木は泣いていた。 情けなかった。梨沙のような女の子はおろか、こんなちっぽけで貧弱な女の子にすら泣かされている自分に。 殺せるはずの機会に恵まれているのに、全く活かせない自分の駄目さに。 しおに言われた事へ、何も言い返せ泣くしかない。何も意見も持っていない自分の無さに。 ───何がしたい? ───そんなの、僕だって分からないよ。 実際には。 仮に電撃を撃とうとしても、ネモが先に反応して藤木を戦車から付き落とすか。 何らかの対処をして、殺していただろう。それだけの力の差がある。 だから、やはり藤木は運が良いのだ。またしても九死に一生を得たのだから。 「ぐ、……く、ぅ……っ」 けれども、それに気付けないまま藤木は泣き続けていた。 しおはやはり理解が出来ないような顔で。 ネモも何故泣き出したのか、困惑して。 それぞれの考えや思いを浮かべながら、藤木の情けない泣き声が虚しく響き渡る。 【E-5/1日目/午前】 【孫悟空@ドラゴンボールGT】 [状態]:疲労(大)、右肩に損傷(大 動きに支障あり)、ダメージ(中)、界王拳の反動(中)、満腹、腕に裂傷(処置済み)、悟飯に対する絶大な信頼と期待とワクワク [装備]:なし [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2(確認済み)、首輪の解析データが記されたメモ [思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。 1:首輪の解析を優先。悟飯ならこの殺し合いを止めに動いてくれてるだろ。 2:悟飯を探す。も、もしセルゲームの頃の悟飯なら……へへっ。 3:ネモに協力する。 4:カオスの奴は止める。 5:しおも見張らなきゃいけねえけど、あんま余裕ねえし、色々考えとかねえと。 6:大分飛ばされちまった。ネモ達を追いかけてえけど、肩の傷も放っとくとやべえな……。 7:リーゼロッテを警戒する。 [備考] ※参戦時期はベビー編終了直後。 ※殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。 ※SSは一度の変身で12時間使用不可、SS2は24時間使用不可。 ※SS3、SS4はそもそも制限によりなれません。 ※瞬間移動も制限により使用不能です。 ※舞空術、気の探知が著しく制限されています。戦闘時を除くと基本使用不能です。 ※記憶を読むといった能力も使えません。 ※悟飯の参戦時期をセルゲームの頃だと推測しました。 ※ドラゴンボールについての会話が制限されています。一律で禁止されているか、優勝狙いの参加者相手の限定的なものかは後続の書き手にお任せします。 【C-5/1日目/午前】 【リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】 [状態]:ダメージ(大、再生中)、疲労(大) [装備]:なし [道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、羽蛾のランドセルと基本支給品、寄生虫パラサイド@遊戯王デュエルモンスターズ(使用不可) [思考・状況]基本方針:優勝する。 0:休息を取る。 1:野比のび太、フリーレンは必ず苦しめて殺す。 2:ヴェラード、私は……。 [備考] ※参戦時期は皐月駆との交戦直前です。 ※不死性及び、能力に制限が掛かっています。 ※幻燈結界の制限について。 発動までに多量の魔力消費と長時間の溜めが必要、更に効果範囲も縮小されています(本人確認済み)。実質、連発不可。 具体的には一度発動すると、12時間使用不可(フリーレン戦から数えて、夕方まで使用不可) 発動後、一定時間の経過で強制解除されます(本人確認済)。 【C-2 カルデアの近く/1日目/午前】 【キャプテン・ネモ@Fate/Grand Order】 [状態]:魔力消費(小)、疲労(中) [装備]:.454カスール カスタムオート(弾:7/7)@HELLSING、 オシュトルの仮面@うたわれる者 二人の白皇、神威の車輪Fate/Grand Order [道具]:基本支給品、13mm爆裂鉄鋼弾(40発)@HELLSING、 ソード・カトラス@BLACK LAGOON×2、エーテライト×3@Fate/Grand Order、 神戸しおの基本支給品&ランダム支給品0~1 [思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。 0:しお、泣かせたのか? 1:カルデアに向かい設備の確認と、得たデータをもとに首輪の信号を解析する。 2:魔術術式を解除できる魔術師か、支給品も必要だな…… 3:首輪のサンプルも欲しい。 4:カオスは止めたい。 5:しおとは共に歩めなくても、殺しあう結末は避けたい。 6:エーテライトは、今の僕じゃ人には使えないな…… 7:リーゼロッテを警戒。 8:カルデアにマーダーが襲ってくる前に何とか事を済ませたいけど……。 9:悟空とも合流したいし、藤木もどう対処するか……。 [備考] ※現地召喚された野良サーヴァントという扱いで現界しています。 ※宝具である『我は征く、鸚鵡貝の大衝角』は現在使用不能です。 ※ドラゴンボールについての会話が制限されています。一律で禁止されているか、 優勝狙いの参加者相手の限定的なものかは後続の書き手にお任せします。 ※フランとの仮契約は現在解除されています。 ※エーテライトによる接続により、神戸しおの記憶を把握しました。 【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】 [状態]ダメージ(小)、全身羽と血だらけ(処置済み)、精神的疲労(中) [装備]ネモの軍服。 [道具]なし [思考・状況]基本方針:優勝する。 0 何なんだろう、藤木(このひと)。 1 ネモさん、悟空お爺ちゃんに従い、同行する。参加者の数が減るまで待つ。 2 また、失敗しちゃった……上手く行かないなぁ。 3 マーダーが集まってくるかもしれないので、自分も警戒もする。武器も何もないけど……。 [備考] 松坂さとうとマンションの屋上で心中する寸前からの参戦です。 【藤木茂@ちびまる子ちゃん】 [状態]:手の甲からの軽い流血、ゴロゴロの実の能力者、シュライバーに対する恐怖(極大)、泣いてる、自己嫌悪 [装備]:ベレッタ81@現実(城ヶ崎の支給品) [道具]:基本支給品、拡声器(羽蛾が所持していたマルフォイの支給品) グロック17L@BLACK LAGOON(マルフォイに支給されたもの)、賢者の石@ハリーポッターシリーズ [思考・状況]基本方針:殺し合いに乗る。 0:第三回放送までに10人殺し、その生首をシュライバーに持って行く。そうすれば僕と永沢君は助かるんだ。 1:次はもっとうまくやる 2:卑怯者だろうと何だろうと、どんな方法でも使う 3:最優先で梨沙ちゃんとその友達を探して殺したいけど、シカマルが怖い。 4:僕は──神・フジキングなんだ。 5:梨沙ちゃんよりも弱そうな女の子にすら勝てないのか…… ※ゴロゴロの実を食べました。 ※藤木が拡声器を使ったのは、C-3です。 091 足りない箇所を埋め合う様に 投下順に読む 093 悪魔は神には頼らない 時系列順に読む 077 不平等な現実だけが、平等に与えられる 孫悟空 097 Ave Maria キャプテン・ネモ 098 闇の胎動 神戸しお 074 ここに神は見当たらない 藤木茂 055 愛を示す術を失いかけても リーゼロッテ・ヴェルクマイスター 000 [[]]
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340 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 11 41 29 ID ??? そう言えばSWの防城戦で城門の前や破られた城壁にスピリットウォール:ノームを使って 破城槌の使用の邪魔や応急処置をしてたら、GMに「卑怯者!前に出て戦え」と言われた。 俺の行動はそんなに卑怯か? 367 名前:340[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 12 26 46 ID ??? 情報不足らしいので捕捉 元々レイド防衛戦だから負けシナリオで、王族を逃がす為の時間稼ぎシナリオだった。 GMの思惑では時間を稼ぐた為に一か八か敵将を狙って打って出るはずだったらしい。 それで返り討ちにあって時間稼ぎ失敗+捕虜にする予定だったのが地道に城壁を修復したり、 梯子車をファイアボールで焼き払ったり、バトルソングで補助したりして時間稼ぎに成功しそう だったのが気にくわなかったみたい。 374 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 12 33 39 ID ??? 367 レイド防衛線…!いい響きだ 負け戦ってのはすでに(歴史上)決定しているのね なんつーかあれだな、シナリオがアイテムコレクションの中の小話のようだw 386 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 12 41 48 ID ??? 374 >アイテムコレクションの小話 そのノリだと報告者のやった事って「クリエイト・ウォール」の紹介エピソードみたいだな。 それじゃスペルコレクションだけど。 勝てない戦いに赴かせようとして、その目論見が外れたら「卑怯者!」と罵るって・・・ GMが困ったちゃんというか、ただのアフォに見えて来たw 390 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 12 47 50 ID ??? 374 魔術師「皆さん、殿下は無事、落ち延びられたという知らせが届きました!」 神官「おお! 我らの希望は残されたか!」 盗賊「さて、どうする? こっちの狙いは達成できたが……降伏するか?」 精霊使い「無理っぽいわね、敵さん、相当頭にきてるみたい。今更降伏を認めてくれそうにないわ」 神官「お主が精霊の壁で散々時間稼ぎしたせいじゃな」 精霊使い「えー、誰かさんが魔法で攻城兵器を焼き払ったせいよ」 魔術師「ええ! 僕のせいですか!?」 戦士「……じゃ、俺はいくわ」(剣を取って城門の方へと歩き出す) 魔術師「つきあいますよ」 盗賊「……ま、降伏しても死罪は免れそうにないしな」 精霊使い「ほんと、みんな馬鹿よね。……私もだけど」 神官「みな、喜びの野で再び会おうぞ」 というシーンが浮かんだw 392 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 12 55 24 ID ??? 攻城戦でGMの演出でメテオストライクで楼閣&城門がグチャグチャになった事がある。 最初からやってくれやウォードタソ。PCの頑張りが完璧無意味でかなりダレた。 別に小説の再現なんてPLは誰も望んでない。 515 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 22 52 41 ID ??? 374に 386、その挑戦受けた! ――情況は劣悪だった。 もとよりの負け戦であり、一両日中にもこのレイドは落ちるだろう。 それは承知の上での参戦だ、そのことに異論はない。 かといってもちろん、全てを諦めているわけでもない。 今、我が軍の決死の時間稼ぎの間に、王族は密かに隣国へと逃れる手はずになっている。 我々が粘れば粘るほど、王族の安全は高まる。王家さえ無事ならば、再起のチャンスは残る。 つまり、この負け戦において、陥落を一分一秒でも遅らせる事こそが、我々の現在の 勝利条件と言うわけだ。 とはいえそれでも、情況が劣悪な事に変わりはない。 我々も必死に抵抗した。弓矢の雨を降らし、それが尽きたなら熱湯や転がる石すらも放ち、 協力を申し出た冒険者一行の中の魔術師殿はその火炎の魔法で敵軍の梯子車を焼き払い、 神官殿は戦意高揚の歌で士気を補い。 だが、それでも敵軍は、すでに城壁に取り付いている。 敵軍の中には、攻城槌も見える。城壁を破られてしまえば、辛うじて均衡を保つ戦局も一気に 傾くだろう。だからこそ攻城槌は優先目標とせよとの指令も下したが、魔術師の魔力もつき、 城壁を登ってくる敵兵を叩き落す事で手一杯な現状では、それもままならず……先ほどから 幾度となく、鈍い破砕音が響いている。 ずっと我々を守ってきた城壁に徐々に亀裂が広がっていく様子は、まさしく我々の士気ごと 砕くかのような胆の冷える光景だった。 ――もはや、ここまでか。 城壁はもう幾度も持たないだろう。こうなっては、城壁が破られる事を規定の事実として、 そこからなだれ込む敵軍の迎撃のために陣を引き直すのが得策だろう。 最悪なのは、なだれ込んだ敵軍に押し切られ、城壁を内側から開放されてしまう事。 そうなっては、その瞬間に勝負は決まる。 それだけは避けなければ―― 「ここは、僕に任せてください」 私がそう計算している中で、冒険者一行の中の一人、線の細い青年が私の横に歩み出た。 516 名前:ごめん長すぎた、515続き[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 22 53 03 ID ??? 戦士殿やドワーフ殿のように前線に立つでなく、魔術師殿や神官殿のように奇跡の御技を 振るうでもないこの青年のことを、私は正直忘れかけていた。 だが――今こうして私の横に歩み出る青年の瞳には、強い意志がこもっている。 一体何を――と、私が問いかけようとした時、ついに城壁が崩壊した。 鬨の声を上げ、場内へとなだれ込もうとする敵兵たち。 く、迎撃の陣を引くのが遅れた、何たる失態――! だが、焦燥に駆られる私を横目に、青年は落ち着いた様子で瞑目し、優雅に手指を舞わせる。 その口から漏れるのは、私の知らない、謳うような言葉――。 「ノームよ、その堅牢なる姿を現し、我らを守る盾となれ」 ――大地が、鳴動した。 破られた城壁の、その地面。そこが突如、巨人が起き上がるかのように盛り上がり始めたのだ。 不意に足場が盛り上がった敵軍はもちろん、それを見守る自軍すら呆然と見守るその中で、 みるみる盛り上がった大地の壁は城壁にぴたりと寄り添い、あらたな城壁と化したのだ。 驚いた私が隣に目を向けると、青年は額に汗を浮かべながらも、笑顔を浮かべた。 「大地の精霊の力を借りて、壁を作りました。これでもうしばらくは持つでしょう」 私は我に返ると、青年に頷いてみせる。 そして、声を張り上げた。 「さあ! この破られぬ城壁こそ、我らが戦意ぞ! 皆のもの、我らの意地を示すのだ!」 遅れて、自軍から鬨の声が上がる。新たなる奇跡を目の当たりにして、士気の高揚は十分だ。 逆に敵軍にしてみれば、やっと破った城壁がすぐさま復元するというのは、これ以上なく 戦意をくじけたはずだ。青年の様子を見れば、そう何度も振るえる術でもないのだろうが、 なに、そんなことは敵軍に知らせてやる必要はない。 これでまた多少なりとも、貴重な時間を稼ぎ出す事が出来た。私は青年に感謝の言葉を述べつつ、 意気を新たに自軍に指令を下す。 さあ、敵軍諸君。今しばし、我らが負け戦にお付き合いいただこう――! 523 名前:340[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 23 24 59 ID ??? いい加減俺の話をほじくり返すのやめてくれ。 そしてちゃんと生き延びたから勝手に人のPCを決死隊にしないでくれ。。 脱出方法は無限のバック&テレポートのスクロール。 526 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 23 34 33 ID ??? 523 ふと思ったんだが、テレポートのスクロールあるんだったら、それで王族逃がせば良かったんじゃね?w 527 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 23 34 58 ID ??? 523 ワロタww それってGMの想定最初から崩れてるじゃないかwww 529 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 23 37 53 ID ??? 526 自分達の脱出手段を差し出せと言うのか! 一緒に逃げれば良かったと思う。 530 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 23 40 00 ID ??? 527 だから出てきた所を返り討ちにして捕まえたかったんだろ。 531 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/07/05(土) 23 43 54 ID ??? 523 えー、全員生き残ったのー。 その話はどう考えても王族逃がした後、やりとげた漢の顔で敵の大群に突撃ENDじゃないかー。 もう少し空気嫁よー。 と、外野の人が勝手なことを言ってましたーw スレ188